第2回 世界獣医師会 世界医師会“One Health”に関する国際会議 〜“One Health”概念から実践へ〜

主催者代表挨拶

Dr. René Carlson
Dr. René Carlson

「第2回世界獣医師会-世界医師会“One Health”に関する国際会議」は、獣医師と医師を代表する2つの国際団体と2つの国内団体による共催という素晴らしい形で日本で開催されるものであり、本会議に皆様を歓迎できることは私にとってまさにこの上ない名誉であり、慶びであります。

私たち人類が共有する母なる地球において、人口は増加し続けており、この地球に住む人間と動物の両者の生息環境に関る問題はますます複雑な社会的課題となっていくことでしょう。医師と獣医師が垣根を超えて関係を深め、協力しあうことはもちろん、公衆衛生と社会科学の専門家、野生生物学者と環境学者といったその他多くの関連職種において、より多くの予防策を展開し、全体としての備えと対応のためより包括的なコミュニケーション・ネットワークを整備することが、ますます重要になります。

都市化による急激な経済成長と世界人口の密度増加がもたらすより高い社会的リスクの可能性、病原体への曝露の可能性が増大する野生生物生息地のさらなる浸食、清潔な水、そして安全で動物愛護にも配慮して生産されたタンパク質減としての動物の継続的需要と欲求など、課題は山積しています。とりわけ重要なのは、人と動物の共通感染症である新興・再興感染症が増加している問題と、薬剤耐性菌に係る問題のさらなる進行に対応することです。私たちは、単に“One Health”という概念を理解するという段階から、これらの複雑な問題に対して真に学際的なOne Healthに基づく対応を実践することの重要性を評価する段階へと進む必要があります。

この会議をより意義深いものとしていただくためにご臨席いただく多くの政府関係者の方々、講演してくださる多くの専門家の方々、ならびに会議にご参加くださる皆様全員に、日本の福岡県北九州市というこの美しい会場に集って頂くことに私個人として感謝の意を表させて頂きます。

Sir MichaelMarmot
Sir MichaelMarmot

私たちの健康は、誕生し、成長し、生活し、仕事をし、年齢を重ねていく環境によってかなりの程度が決定されます。これを、健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health;SDH)と呼んでいます。しかし、これらの社会的条件は、人が自らの生活環境に如何に対応するかということとも関連しており、その対応の仕方によっては、私たち人間だけではなく、飼育動物、自然環境そして最終的には野生動物にも影響を及ぼします。私たちを取り巻く社会環境が、私たち人間が自然の脅威にどれほどさらされるかを決めることになるのです。

最近の西アフリカにおけるエボラ出血熱の大流行は、社会構造、この場合は医療制度でしたが、その欠如によって、もっと上手く封じ込められたはずの危険にどれほど人々がさらされるのかを示す良い例です。貧しい国々における農村地域の最貧家庭の子どもたちが狂犬病の主な犠牲者であった一方で、豊かな地域では、狂犬病の予防接種が非常に成功を収めています。社会正義のため、私たちは健康の社会的決定要因にいっそう関心をもち、人と動物と環境の安寧に向かって一体となって取り組むことが求められているのです。

“One Health”という概念は、人と動物の共通感染症のベクターの探求、食品の安全・衛生、ペットの愛玩といったことを超えるものです。それは、人が社会における正義と公平に対処する一つの側面であり、自らの生活環境に対する尊敬の念でもあります。より公正な社会のために、より包括的なアプローチを取り入れるため、“One Health”の会議で獣医師と医師が一致協力して尽力していきましょう。

横倉義武
横倉義武

世界獣医師会と世界医師会は、2012年10月世界医師会バンコク総会において、国際保健向上のため、獣医学と人間の医学、獣医師と医師が一つとなって取り組むという“One Health”の理念のもとに協力しあうことに合意し、覚書を取り交わしました。
人類と感染症の戦いの歴史を振り返ると、ペストや天然痘、インフルエンザ、エイズ、エボラ出血熱など、ヒトと疾患との闘いは、感染症との闘いが大部分を占めてきたと言っても過言ではありません。一方で、感染症との闘いの歴史が、医学の発展、進歩に大きく寄与してきたとも言えます。
これまでも医師と獣医師は、それぞれの立場から着実な取り組みをしてきました。今後、医師と獣医師とが“One Health”の理念を共有して知を結集することにより、さらなる感染症対策の推進、延いては医学、獣医学の進歩に繋がるものと確信しています。
グローバル化が進む中、世界規模での感染症の蔓延が懸念されていることから、当国際会議では、人獣共通感染症、薬剤耐性菌等の現状及び動向と課題に焦点を当て、国内外、特にアジアの専門家の声を聞くことを主な目的としております。

当国際会議は、医療の国際貢献のみならず、地域の活性化を図る上でも大いに意義のあることと受け止めております。特に、福岡県はアジアの玄関口として、アジアからの参加者を受け入れる上で、この上ない立地条件となります。また、会場となる北九州市がこの国際会議の開催を契機として、さらに国際都市として発展していくことを期待しております。

藏内勇夫
藏内勇夫

近年、エボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、新型インフルエンザ等の流行、台湾の野生動物における狂犬病等の人と動物の共通感染症の発生が国際的な問題となるとともに、我が国におけるデング熱の発生、最近では中南米でのジカウイルスの感染拡大など越境感染症が我が国にとっても脅威となっています。
このような状況の中、人と動物の健康と環境の保全を一体として対応する“One Health”の理念が関係者の間で普及してまいりました。日本獣医師会は、いち早くこの理念に共感し、本会の活動方針として「動物と人の健康は一つ。そして、それは地球の願い。」を掲げて活動を推進しています。さらに、2013年11月には、公益社団法人日本医師会との間で、“One Health”に基づく学術協力の推進に関する協定書を取り交わし、その後、医師と獣医師の情報交換の場として、連携シンポジウムの開催等を実施してまいりました。
また、全国においても、各地域の獣医師会と医師会の連携が進められており、医師と獣医師が協力して国民生活の安全・安心に寄与する体制を築くことは私の念願であり、使命と考えております。
このような日本における医師と獣医師との先進的な連携活動が世界獣医師会(WVA)と世界医師会(WMA)の関係者に高く評価され、このたび「第2回WVA-WMA“One Health”に関する国際会議(The 2nd WVA-WMA Global Conference on One Health; 2nd GCOH)」を福岡県北九州市小倉で開催する運びとなりました。本国際会議では、人と動物の共通感染症、薬剤耐性菌問題等“One Health”に関連する様々な課題が論議されます。
日本獣医師会といたしましては、我が国における国際会議の開催が、地球上の人と動物が安心して共生できる社会の構築につながるよう、心から期待するものであります。
関係者の皆様方におかれましては、我が国における医師と獣医師の活動を世界にアピールする絶好の機会となる2nd GCOHに、ご出席いただきますようお願いいたします。